平成4年度までに以下の結果が得られた。 1.分子量及び官能基を異にするペクチンの調製と定量 市販ペクチンを対照として酸脱メチル化法により官能基を異にするペクチン及び新鮮果実類よりペクチンを調製し、化学的組成の分析を行うとともに、GPCにより分子量と分子量分布の定量(科学研究費交付による)を行った。脱メチル化の時間が長くなるに従い、メトキシル基が減少し、分子量分布は低分子側にシフトすることを明らかにした。 2.分子量及び官能基を異にするペクチンのゾル及びゲルのレオロジー的性質におよぼす金属イオンの影響について、(1)粘性挙動、(2)ゾル-ゲル転移過程の物性の測定、(3)流動性のあるゲルの物性について測定を行った。Ca^<2+>によるゲル形成能は、脱メチル化が進むに従いCa^<2+>が少量でも均一なゲル形成が認められたが、Mg^<2+>は分子内、分子間結合が急激に進行するためか不均一なゲル化挙動を示した。 3.分子量及び官能基を異にするペクチンの熱的性質におよぼす金属イオンの影響について、示差走査熱量計により熱的性質を測定した。メトキシル基含有量の相違が、ゲルの凍結、融解ピーク温度に影響をおよぼし、また、凍結、融解にともなう吸熱及び発熱エンタルピーにも関与することが認められた。以上のことから、ペクチンの分子量及び官能基の相違はペクチンのゾル・ゲル転移に重要な影響を与えていることが明らかになった。 4.愛玉子ペクチン様多糖の機能特性については、(1)愛玉子水抽出液のゲル化挙動とゲル形成に関与する成分および、(2)愛玉子水溶性多糖ゾルおよびゲルのレオロジー的性質を明らかにし、(3)愛玉子ゲルのテクスチャープロフィルについても検討した。今後さらに、ゾル・ゲル中の水の挙動と各種添加イオンの影響について検討を重ね、分子量や官能基を異にするペクチンの機能特性を明らかにしたい。
|