ゴムやベルトで胴部に固定する着装方式は、生活動作を行う時に胴部に衣服圧を生じさせ、極端な圧迫では弊害につながる恐れがある。フィット性の強い衣服および衣服圧を考慮し設計されたスポ-ツウエアなどについては、健康の視点に立った衣服圧の解析が必要である。従来の研究では、物理的圧迫量と心理的感覚量との検討が多く行われている。衣服圧が生体にどのような影響を与えているかを、客観的に判断出来るような検査方法を確立出来ればと考えた。そこで、上肢正中神経刺激による体性感覚誘発電位を指標として、腹部への圧迫時と無負荷時の呼気相・吸気相に伴う加圧の変動に着目し、比較観察することにした。初年度は本実験に備え、実験条件設定のための予備実験を計画し検討を行った。 加圧カフ(6×70cm)を作製し、胴囲位置に装着し、血圧計による水銀の圧量表示にあわせて加圧した。加圧量は官能検査で「きつい」と回答した20〜30mmHg程度とした。しかし各部位で衣服圧は異なるので、胴囲線上5部位で衣服圧を測定する必要性が生じた。測定センサ-は小さなバル-ン状のものが最適であったので、これにより測定することにした。 C4'、CZに置いた脳波用皿電極(基準電極は両側耳朶に装着)で体性感覚誘発電位を記録した。正中神経刺激については、刺激頻度の検討から、1秒1回より刺激間隔をあけることにした。刺激強度は手の動く閾値の約1.2倍で行った。鼻に装着したサ-ミスタ-により呼吸運動をモニタ-し、呼気相・吸気相の一定時点に到達した時、刺激装置をトリガ-した。加圧時および無負荷時の呼息時・吸息時について、体性感覚誘発電位を比較検討したところ、加圧時の呼息時・呼息時では、体性感覚誘発電位変化に相違激向が見られた。 中潜時・長潜時では覚醒状態の違いで誘発電位変化を生じることから、デ-タサンプルができるだけ一定にとれる条件について今後検討したい。
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