フィット性の強いガードル・パンティーストッキング・スポーツウェアなどは、衣服圧が生体に負荷することを前提に設計され着用されている。衣服圧の適正値については健康の視点から解明されていないことが多いので、衣服圧が生体に与える影響を客観的に判断できるような検査法について検討するために本研究を試みた。生体に生じる物理量としての衣服圧と感覚値との関わりについても検討した。20〜35msecの中・長潜時に着目し、正中神経刺激による体性感覚誘発電位変化を、腹部への圧迫時と無負荷時での吸息相、呼息相と深呼吸吸息相について観察した。被検者は4名で9回繰り返し実験を行った。呼吸曲線の吸息・呼息相の終点の少し手前でトリガーを掛け、C4′とCZに置いた脳波用皿電極がとらえた電位変化をコンピューターで加算平均(1試行128回あるいは256回)し、得られた波形より、頂点潜時・頂点間振幅を求め、各実験条件の平均値間で有意性の検定を行い検討した。実験中、被験者は開眼で椅座位安静を保ち、手部のみ無作意で開閉運動を行っている。ウエスト位置に装着した加圧カフの圧量は、被験者がきついと回答した30〜40mmHg程度とした。C4′よりCZの方が加圧に伴う変化傾向をはっきりとらえることができた。CZについてみると、60msec付近のP2N3の頂点間振幅で、深呼吸吸息時に次いて普通呼吸呼息時に衣服圧の影響が生じていた。ポーチ型圧センサーで衣服圧を測定すると吸息相の方が圧迫が強いが、脳の活動レベルでは呼息相の方が圧迫影響が強いことが判明した。被験者28名を対象とした圧迫感と衣服圧の検討から、衣服圧をX、感覚値をYとして求めた回帰式の相関係数は0.9で直線性が高く、両者はWeber-Fechnerの法則に従っていた。胴囲線上ではバックの部位が最も感度が低く、5部位中最も感覚の高いのはフロントサイドであったことから、マイナス衣服設計時には特にフロントサイドに配慮すべきことが明らかになった。
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