1.現代社会は、社会機構の複雑化にともない生産と消費はますます遊離してきた。消費者にとって、モノ・サ-ビスの提供者の戦略に無自覚的に巻き込まれ、それが順調な家庭生活の遂行を困難なものにすることもありうる。ところで、消費者教育とは「意思決定」についての教育である、と言われる。消費者側には自ら行う選択に対して責任を持つことが必要であり、そのためには自主的・自立的な意思決定を自覚することが要請される。本研究では、小学生・中学生・高校生のそれぞれの発達段階において、意思決定にかかわるどの側面がどのように発達して行くのか、について探った。 2.対象者は、群馬県内の公立校に在学中の小学5年生210名、中学2年生167名、高校2年生173名、合計550名。手つづきは、質問紙調査法である。 3.結果は以下のようである。(1)情報に対する関心は、小・中・高と発達段階が進むに伴い著しく高まっていく。高校生になると宣伝文句をそのまま鵜呑みにせず自分で判断する傾向が強くなる。(2)しかし、他者に追随したり、おだてに乗り易いなどの個人の特性についての自己分析は、小学生よりもむしろ中・高生に多い。(3)価値観の堅持については、発達的な差は見られない。(4)「必要なもの(need)」と「欲しいもの(want)」を吟味することは、小学生と中学生の間には差は見られず高校生で増加することから、高校生は自ら欲望をコントロ-ルすることがより容易な段階に到ると思われる。(5)意思決定の際に最も重要視する参考情報源は、小学生は母親父親、中学生は親友、高校生は友達間の評判や本・雑誌が多く、ごく身近かで明確な発信源の情報から、次第に、抽象的で捉えどころのない情報へと移行している。
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