手編み、あるいは編機で構成したニット地の被服は、ゲ-ジをとって設計したにも関わらず、実際に製品を着装した場合、予測していた立体形状と異なるシルエットを呈することがしばしばある。これらは、ニット地が一般的に織物に比べて伸び易く、着装した場合、自重による変形が起こるためと考えられる。ニット地の衣服について、設計の段階で素材の物性的要因を考慮したパタ-ンを得ることを目的として、その物性と着用シルエットの関係を定量的に検討した。実験は、大きく2段階に分けて行い、次の結果を得た。 1.毛糸4種類を用い、糸の太さ(3種類)および編目密度(4段階)を変化させた試料を家庭用編み機を用いて編製した。試料の大きさは20cm×20cmの正方形とし、KESーFBシステムのニットコンディションによる引っ張り特性および基本的な力学特性の測定を行った。その結果、ニット地は編目密度が小さくなるほど、また細い糸ほど伸び易く、せん断しやすく、曲げ軟らかくなり、せん断、曲げ特性共にヒステリシス幅は小さくなった。 2.JIS婦人9号サイズの人台を用いて接着テ-プ法によるレプリカを取り、これを展開して袖無し、衿無しの最も基本的なワンピ-スドレスのパタ-ンを製図した。このパタ-ンを用いて、織物(シ-チング)のワンピ-スドレスと、1.と同条件のワンピ-スを製作し、人台に着装させ、全体のシルエットを写真撮影、また部分的な変形を直接計測してワンピ-スドレスの形状を表すパラメ-タを求めた。その結果、糸の細い編目密度の小さいニット地ほど、ワンピ-スの着用による変形が大きいことが明確となった。その変形は、自重による垂直方向に伸び、背の上部やウエストでは、周方向に収縮することがわっかった。 次年度は、これらの結果を基に、ニットで任意の形態のワンピ-スを設計する方法を検討する。
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