研究概要 |
味噌の香気成分として重要な揮発性含窒素及び含硫化合物と味噌の香気成分に不可欠な耐塩性酵母との関わりについて研究した。その研究成果はつぎのごとくであった。1.揮発性成分の捕集装置の組立とその分析法を確立し報告した。二.味噌原料配合より案出したグルコースと18種アミノ酸混合物及び食塩からなる合成培地を使用して、上記の研究課題について検討した。酵母無接種培地及び酵母培養液の両者に共通して同定された揮発性含窒素化合物はacrtyloyrrole,pyrazine及び炭素類1〜2の側鎖を持つピラジン類などであった。pyrazine及びピラジン類は耐塩性酵母により、減少する傾向にあるが、耐塩性酵母により新たに生成される窒素化合物はほとんど認められなかった。一方、揮発性含硫化合物として、dimethyl disulfide,dimethyl trisulfide,methionalが同定された。更に、酵母培養液ではこれら化合物に加え、3-(methylthio)propyl acetateとmethionolの生成が認められた。酵母無接種培地中で同定された揮発性含硫化合物は酵母の培養によって減少した。培養液中でのこれら化合物の減少率は、供試酵母のうち、Zygosacchromyces rouxii S84(Z.rouxii)で大きく、これらの化合物を55.2〜99.4%消滅させた。Z.rouxiiによるこれら揮発性含硫化合物の生成と減少はメチオニンを単一窒素源とする無接種培地及び培養液中でも認められ、更に、Z.rouxiiによるethyl 3-(methylthio)propanoateの生成も認められた。3.麹菌のみが熟成に関与する、いわゆる無菌味噌と熟成に麹菌の他に、酵母や乳酸菌なども関与する普通味噌の両者中に揮発性含硫化合物として、dimethyl disulfide,dimethyl trisulfide,methionalなどが同定された。これら化合物は無菌味噌に比べ普通味噌に少ない傾向にあった。また、普通味噌ではこれら化合物に加え ethyl 3-(methylthio)propanoateとmethionolも同定された。
|