本研究の目的は、1.都市部および農山村部の一人暮らし高齢者・寝たきり高齢者の食生活、栄養摂取を規定するさまざまな要因を明らかにするとともに、2.見いだされた食生活改善のためのキーフーズにより、対象それぞれの栄養教育指針を策定し、その指針にそって両対象に栄養教育を実施した場合の効果判定を試みることであった。 研究目的・研究実施計画にそって研究を行なうことにより、農山村部一人暮らし高齢者につき、本年度は次の結果が得られた。 1.一人暮らし高齢者では超音波骨密度測定によるspeed of sound(骨伝導速度)は、対象の社会性(0.1%)、精神の安定性(5%)、休養生活(5%)は負の相関を有し、保健行動実施後(1%)とは正相関した。 2.拡大家族、夫婦のみの核家族の高齢者に対し、一人暮らし高齢者では食事時の咀嚼回数がたん白質源摂取量、保健行動とよく相関し、よく噛むことは一人暮らし高齢者の生活の質を高めることに貢献している。 3.農山村部一人暮らし高齢者の食生活を改善するキーフーズといえるものは見だしえなかったが、食品群摂取状態は全般的に悪く、栄養教育により野菜類、果物類、油脂類の摂取が増加した。牛乳・乳製品摂取は減少した。しかし期間中の対象との往復書簡により、食・健康に関する意識の高まったことが確認され、繰り返し指導期間が今少し多くできれば、対象の食生活はより以上に改善できるものと考えられる。
|