本研究の特色は、21世紀において急増が予測される寝たきり老人の介護指標を体動面から検討する点にある。近年、社会構造は変化し、従来家庭内で行われていた老人介護は、家庭外、すなわち公的機関で行われる可能性が濃くなってきた。公的機関での介護のおいて、最も重要な点は、寝たきりの状態を客観的に把握することである。厚生省による寝たきり老人の定義は、“65才以上の者で、6カ月以上の寝たきりの状態(昼間12時間の中2/3以上臥床)にある者、又は、寝たきり状態が6カ月以上続くことを予想される者をいう"となっているが、詳細については述べられていない。著者は、寝たきり老人における臥床状態を客観的に把握するために、682名の寝たきり老人を対象に実態調査を行い、床ずれ予測スコア-を提案した。また、寝たきり老人の睡眠については、特別養護老人ホ-ム入所者男女各3名計6名を対象に、昼間および夜間の体動を記録し、寝たきり老人の体動は若年者と比較して少ない傾向にあるが皆無ではない、ことを確認した。本研究は、これらの結果をふまえて、寝たきりの状態をより客観的に判定しようとするものであるが、今年度は次年度の予備実験と考えて、若年者を対象に以下の2点の体動を記録した。すなわち、1.体動自動測定装置に、赤外線フィルタ-を附属したストロボカメラを設置し、体動と寝姿勢を同時に記録した。また、2.ビデオカメラにより、体動を詳細に観察した。その結果、若年者の体動は上半身より下半身の方が多く、下半身において種々な体動が出現することが明らかとなった。予備実験は成功したと思われるので、次年度、寝たきり老人の体動を測定し、臥人状態を客観的に判定したと考えている。本研究の結果が公的機関での介護指標となることを希望している。
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