「寝たきりの状態は、なるのではなく、ならされるのである」といった報告もあるように、介護の初期の段階で身体的状況を客観的に把握することが大切である。何をもって客観的把握の指標とするのか、については、種々な実験的検討が必要であるが、体性運動機能である体動は有効な指標となると思われ、調査および実験を行なった。その結果、以下の点が明らかとなった。 1)広島県における在宅の寝たきり老人数は、12952名(1992年度調査)であり、65歳以上の老人の3.4%を占めているが、そのうちの78.9%は、75歳以上の後期高齢者であった。 2)寝たきりの状態における性差を検討するため、数量化理論第2類を用いて解析した結果、性差を判別する要因として、介護に関する要因が上位に上げられた。 3)寝たきり老人の体動測定値については、夜間における最大静止時間が重要であり、A.D.L(Ability of Daily Life)との関連が高い。両者の間には、相関が認められ(相関係数:0.5690、1%危険率で有意)回帰式としては、y=0.005χ+1.267が得られた。 4)A.D.Lは、2.4以下でああることが望ましく、2.5以上では、特別な配慮が必要とされる。 5)寝たきり老人の介護に関しては、人間介護が不可欠であるが、衣環境に関していえば、褥瘡予防寝具の利用など物的介護も可能である。 寝たきりの状態は、人としては最も不幸な状態のひとつであると思われるが、老人および介護者が、できるだけ快適な状態で暮せることが大切である。介護の初期の段階において、最大静止時間を記録し、最適な介護を提案することは意味があると考える。体動自動測定装置が、公的私的な介護機関で設置されることが望ましい。
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