研究概要 |
A.I.オパーリンの1924年論文を主に分析した昨年度に続いて今年度は,″化学進化″という概念について,また,オパーリンの36年以降の諸著作の展開を中心に調べ,以下のことが明らかになった。 1.現在,化学進化による生命起原論をオパーリン・ホールデン学説と称することがあるが,″化学進化″の話は,1949年,J.D.バナールによって使われている。その後,オパーリン著作の英訳者S.モルグリスによって52年に使われ,M.カルヴィンによって50年代後半以降,普及された。ただし,バナール以前の使用例の有無については未検討である。(『サジアトーレ』No.21に発表)。 2.オパーリンの最初の生命起原論のあと,それを発展させ,オパーリンの特徴として「コアセルヴェート説」といわれるようになった36年版以降の諸著作の展開の系統を図示すると,のように三系統に分れる。常に新しい科学の成果の受容に努めて著された,自然科学の専門家を対象とする学術的な第一系統に対して,第三系統は全くの啓学的なもので,内容にもソ連の政治的な情况が反映しているともいわれる。第二の系統は,中間的なもので,自然科学とともに哲学的側面をも含んでいる。(図中〓は,邦訳のあるもの) 3.オパーリンと異って,J.B.S.ホールデンは,29年の発表以後,ほとんど,その生命起原論を展開していない。
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