情報概念と生命概念の相互関係について歴史的・理論的に分析してきたが、一方でテューリングやノイマンらの理論研究が、抽象的な形で生命概念にたどりつきをもったのに対し、DNAの発見以降の分子生物学では、概念的用語として情報理論関係のものが転用されている。それらは、さかのぼれば、シュレディンガーの『生命とは何か』におけるエントロピーについての議論につながるが、その問題を理論的にどう統一するかが今日の重要な自然哲学的課題であり、特に自己組織化、自己生成系(システム)についての理論的分析が鍵となる。それはまた、人工知能研究におけるバイオ化、生命指向において、暗黙知などや身体知をどう扱うかという問題とも関連している。そしてそれらにおいて何をもって「説明」とみなすかという問題があり、それらは、現代における「自然哲学の復興」ともかかわってくる。進化論的認識論(ホパーらの)や行動学における学習理論(ローレンワなど)との関連もさらに見出されたが、それらの同時並行的独立研究であり、それらを今日の立場から理論的に関係づけを行なったことが今年度の本研究の成果である。
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