1.アメリカにおける「単位操作」を基礎概念として成立した化学工学の反応工学への進展過程、ドイツにおけるAparatwesenからChemie‐Ingeneurwissennschaftへの進展過程の文献的研究を行い、化学工学成立過程における「工程」概念、労働における協業、技術を対象とする化学研究の進展、その結果としての研究における基礎、応用、開発研究への機能分化、これら相互の関係をけんとうした。その検討をとおして製造過程における技術的諸要素を統合して「工程」として理解が成立する歴史的過程が次の点に依存していることに注目した。 (1)化学工業において主要な製造工程の技術の発展段階、たとえば連続性が重視される段階のものであるか否か、 (2)製造工程における労働の分割のあり方や機械技術者と化学技術者との協力のあり方、 (3)技術を対象とする科学研究の水準、技術学としての工業化学的研究がその社会における技術を対象としてどの程度の蓄積をもっているか。 2.製造過程における労働の分割と技術学との関連は技師養成制度のあり方に影響を与えるはずであり、この点を検討するために、企業内において技師養成の学校組織をもっていた八幡製鉄所における技師養成用テキストの調査を行った。 3.以上の点をふまえつつ(八幡の資料はまだ活用し得ていないが)、日本における工程成立史をまず化学工学の成立問題としてまとめを行った。 4.さらに戦前の工業化学、化学工学、装置学関連のテキストにおける「工程」把握の状況を個別的にまとめを行った。
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