期限を1年延長し、本年度最終的にとりまとめられた「研究成果報告書」の主要な内容は、以下のとおりである。 第一に、顕微鏡史については、、光学顕微鏡の限界問題に焦点をあて(S.Czapskiの予測等)、また産業技術史的経営史的視点からCarl Zeiss商会製品としての発達を含めて、E.Abbeの顕微鏡の物理光学的理論以来顕微鏡の20世紀的段階(紫外線顕微鏡や限外顕微鏡の発明)までの歴史的過程を、実証的に解明した。 第二に、近代光学ガラス技術史の最初の画期、O.Schott、イェナガラス-技術研究所(GTV-1884年創立)・ショット・ウント・ゲンによる光学ガラスと、器具ガラス等他の新ガラス研究開発の実際的プロセスは、ガラス科学の純理論的な展開というよりも、温度計や器具、とりわけ近代写真術(光フィルター等)との関わりでなされたが、とくに、ショット・ウント・ゲンのガラスの製品表(型録)の変遷、とりわけ新製品の製品番号の推移をたどりながら、光学ガラス(O.系列とS.系列)から温度計ガラス(16IIIと59III)、器具ガラス(161IIIや165III等)から色ガラス(447IIIや金ルビーガラス459III等)、そして紫外線透過性ガラス(UVガラス)までの光学ガラスの発展のプロセスを具体的に明らかにした。 第三に、これらの技術革新を可能にした理由、その社会的基礎に関して、当該経営、Carl Zeiss商会とショット・ウント・ゲン、そして両者を統合するCarl Zeiss財団の、いわゆる「科学的企業」としての思想の展開を検討した。 そして最後第四に、とくに諸科学の新しい連関の代表的な一例として、限外顕微鏡の発明後の諸過程、とくに諸科学への応用等のプロセスを明らかにした。
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