1.バイオテクノロジ-における基礎研究から製品開発への展開過程 1970年代初頭に確立した遺伝子組み替え技術を中心としたバイオテクノロジ-が実質的に産業化されるのは80年代に入ってからのことであった。それは、米国のベンチャ-企業が有用生理活性物質を大腸菌に作らせる生物利用技術を企業化するのに成功したことに端を発表する。日本でも従来、薬品生産とは無関係であった企業も参入し全部で20社を越えた。バイオテクノロジ-は基礎研究と実際の製品生産に至る技術開発までの期間が従来の産業技術と比べると極めて短く基礎研究と技術開発の区別がつかないほどであるといわれるが、その時間差は10年ほどあった。バイオテクノロジ-の代表産物であるインタ-フェロンおよび細胞融合技術を使ったモノクロ-ル抗体を、発端としての現象・物質の発見、学説の展開、産業化の過程について検討した。両者は共に19世紀末に確立した免疫学から派生したものであるが、前者は抗原に対する特異性が高くない生体防御物質として、後者は抗血清よりも抗原特異性が高い物質として開発されてきたことを明らかにした。 2.バイオテクノロジ-の社会への浸透 バイオテクノロジ-の内容が新聞や雑誌記事としてどのように紹介されたかを掲載記事から分析した。新聞記事には学界、産業界のトピック的な記事が1970年代後半から見られるが、一般週刊誌では80年代に入ってからしばしば掲載され、SF調の新生物の出現の可能性を扱ったものや、誇大にビジネスチャンスとしてのバイオテクノロジ-を紹介しているものが目についた。専門雑誌も80年代初頭に内外を問わず創刊されたが80年代半ばには廃刊されたのも少なくないことがわかった。
|