研究概要 |
今日まで、老化の程度(または健康度)を測る尺度として一般に生物学的年齢が仮定され、その推定式が考案されてきた。しかし、生物学的年齢を推定するために利用されている個々の説明変数は、老化現象の一側面を反映するものの、その情報が安静水準における生理的検査結果に限られている。本研究では、安静時のみならず運動負荷時においてより顕著な個人差を示す生理的検査結果・体力テスト結果を説明変数群に組み入れて、ヒトの生物学的年齢(本研究では「活力年齢」(VAc)と定義)を求める推定式を考案した。対象は冠動脈造影所見から軽度または重度の冠動脈硬化性心疾患と判定された者26を含む20〜79歳(50.8±9.2歳)の成人男性154名である。本研究では、健康群128名のデ-タから、同群についてはVAcが暦年齢とほぼ一致するようにVAc=9.76VS+50.4+Zなる推定式を作成した。なお、VS=-0.885-0.073X_1-0.010X_2-0.039X_3-0.006X_4-0.329X_5+0.058X_6+0.018X_7+0.006X_8+0.003X_9+0.005X_<10>(X_1:VO_2@LT,X_2:HR@LT,X_3:Side Step,X_4:Foot Balance with Eyes Closed,X_5:FEV_<1.0s>,X_6:Subscapular Skinfold,X_7:SBP,X_8:TC,X_9:LDLC,X_<10>:TG) Z=0.35Age-17.64である。次に、求めた推定式の妥当性を検討する目的で、冠動脈硬化性心疾患群と高血圧群についてVAcと暦年齢を比較した。その結果、両群ともVAcは暦年齢よりも平均で約8歳高いことが明らかになった。以上のことから、作成した推定式は中高年男性の活力年齢(健康度)の評価に有用であるといえる。
|