本研究の課題は、日本とドイツの戦後スポーツ改革を比較・検討することである。この課題を遂行するために、次の事項を明らかにする。 第1は、アメリカ合衆国および連合国管理理事会(ACC)の対ドイツ占領スポーツ政策の形成と展開。 第2は、アメリカ合衆国占領区における占領スポーツ政策とその展開。 第3は、GHQ/SCAPの対日スポーツ政策・スポーツ改革とドイツとの比較。 研究の結果、次のことが明らかになった。 第1に、合衆国の対ドイツスポーツ政策は、初期には非ナチ化、非軍事化政策とのかかわりで追求され、占領の進行とともに民主化・非集権化が強調されるようになった。 第2に、1945年12月17日に連合国管理理事会(ACC)の決定した指令第23号が、連合国、すなわち全ドイツ的なレベルでの占領スポーツ政策を基礎づけた。 第3に、合衆国軍政府(OMGUS)は、上述の管理理事会指令を踏まえ、スポーツ組織・クラブの非集権化を重視し、州を越えて組織することを正式には認めなかった。 第4に、第2次大戦後の連合国によるドイツ占領は、戦勝四ヵ国による分割統治、軍政による直接統治であった。その点では、間接統治の方式を採用し、実質的に合衆国の単独占領であった日本の場合ては大きく異なっていた。同じ合衆国の政策ではあっても、ドイツに対してはJCS1067に象徴される「ハード」な性格がスポーツ政策にも現われたのに対し、日本に対しては、武道を除き、最初からより「ソフト」な、すなわち奨励的政策が濃厚であったといえる。
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