[目的]今年度は、高齢者に対する短期および長期にわたる運動習慣が運動能やADLに及ぼす効果を検討する目的で、longitudinalな以下の2つの調査を実施した。 [方法]調査1:地域の60歳以上高齢者の篤志家を対象とし、6カ月のウオ-キングプログラムを組み、プログラム前後とその間(1〜2カ月間隔)で次の項目を測定調査し、短期の運動効果を検討する。1)体格 2)呼吸循環機能 3)運動負荷時の心肺機能(selfeーpaced step test)4)バッテリ-テスト 5)運動量(歩行数)6)血液検査 調査2:昭和56年から京都市老人福祉センタ-で、地域の65歳以上の同一高齢者を対象に毎年継続的に体力測定を実施している約100名が今年度10年目を迎える。この高齢者を対象に前記項目から1、2、4、5を測定調査し、10年間の推移を検討する。同時に運動習慣に関する調査も行い、体格や体力に及ぼす長期運動習慣の効果を検討する。また、死亡者や参加できない者については、死因や死亡前の就床期間、ADLの調査(家族への聞き取り調査)を行い、ADLや死因と体力や運動習慣との関連を検討する。 [結果]調査1では、60歳以上の対象者10名(男子2名、女子8名、平均年齢70.8歳)について6カ月(5月から11月)のウオ-キングを実施した。運動は週2回、合同で約40分(初期は20分)行ったが、ほとんどの者は週5回以上のウオ-キングを実施していた。このプログラムでは、“普通"のスピ-ドでのステップテスト時の仕事量、座位ステッピング、長座位体前屈、息こらえで2カ月目から顕著な増加が認められた。また、血圧、体脂肪、血清中性脂肪、コレステロ-ルでも特に、前に高値の者に改善の効果が高かった。調査2では、10年間の体力は明らかに加齢変化が認められたが、その推移の仕方は測定項目間で異なっていた。また、ここでも軽い運動習慣を持つ者での体力低下の割合が小さく、かつADLなどにも問題が少なく、死亡例ではねたきり期間の少ないことが確認ができた。
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