研究概要 |
骨格筋は運動後、インスリンの働きに加えて糖輸送体(GLUT4)と呼ばれるタン白質の働きによって血液中から糖を取り込み、運動中に消費した筋グリコ-ゲンを再合成しているので、一過性の運動によって骨格筋におけるGLUT4の分布状態とともにGLUT4濃度が変動する可能性がある。本研究では体重約215gのSD系雄性ラット15匹を3群に分けa,b群には疲労困憊運動を課した(平均走行時間5時間34分)。a群は運動直後にと殺し、b群は運動直後に1gのグコ-スを経口投与した後24時間後にと殺し、骨格筋のグリコ-ゲン濃度とGLUT4濃度を測定した。c群は対照群とした。ヒラメ筋ではグリコ-ゲン濃度は対照値を100%とすると運動直後は45%、運動24時間後は212%ヘと変動していた。このときGLUT4濃度は対照値100%に対して運動直後は74%に減少し、24時間後は98%に回復した。この結果、ヒラメ筋では運動直後にGLUT4濃度が減少しているにもかかかわらず、糖取り込み機能の低下が引起こされることなく血液中から糖を活発に取り込み、筋グリコ-ゲンの再合成が行われていることが示唆された。運動直後のGLUT4濃度の低下については疲労困憊運動によりGLUT4タン白の分解速度が合成速度を上回ったためと考えられる。また、回復期には合成速度が分解速度を上回るため運動24時間後にはGLUT4濃度は元の安静レベルに回復したものと考えられる。足底筋では筋グリコ-ゲン濃度は対照値100%に対して運動直後は81%、24時間後は448%へと変動していた。このとき、GLUT4濃度は対照値100%に対して運動直後は92%、運動24時間後は92%とほとんど変動がみられなかった。このようなヒラメ筋と足底筋の一過性疲労困憊運動に対する反応の違いについては今後更に検討する必要がある。
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