本研究は、ガングリオシドの持つ神経栄養因子様活性と深い関わりがあると考えられているガングリオシド依存性の膜タンパクリン酸化を分子レベルで解析することが目的である。そのためには、リン酸化基質・酵素・ガングリオシドを膜上で再構成をして解析をすることが重要である。そこで、本年度は、まず当該リン酸化基質である72KDaの可溶化ならびに単離精製法を確立し、遺伝子のクローニングにより一次構造を明らかにすることを目標とした。その結果、本年度の研究目標はほぼ達成された。すなわち、ラット脳P2-P3画分から、CHAPS(終濃度2%)で80-90%の72KDaを可溶化することが出来た。さらに、膜画分から当該タンパク質をOHAPSで可溶化後、DEAEセファロース、オクチルセルファロース、ヘパリン5PWの各クロマトグラフィーとG3000SWのゲルロ過により、電気泳動上単一バンドになるまで精製する方法を確立した。次いで、当該タンパク質の二つのリジルエンドペプチダーゼ断片の部分アミノ酸配列を明らかにした。RT-PCR法を用いて、この二つのアミノ酸配列を含む遺伝子断片を得、これをプローブとして、ラット脳のcDNAライブラリーからスクリーニングし、翻訳領域全長を含むと考えられるクローンを六つ得た。 今後は次のステップとして、大量発現系を確立すること、あるいはリン酸化部位近傍のペプチド断片を合成すること、などにより当該“基質"を調製し、これを用いて(リン酸化)酵素側の単離精製を開始する。
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