1)磁性細菌Aquaspillum magnetotacticumの大量培養方法の確立 本細菌を大量培養する前にどのような培養条件下で磁気微粒子が生合成されるかを検討したところ、培養液中の酸素濃度と窒素源が重要な要素であることが示唆された。具体的には、磁石を有する細菌と磁石を持たない細菌の呼吸鎖電子伝達系の成分を比較検討した。 その結果、硝酸呼吸に関与していると考えられているチトクロムcd_1が磁石を有する細菌のみから精製された。即ち、本細菌は低酸素濃度下で硝酸呼吸(酸素の代わりにNO^-_3を最終電子受容体とする呼吸)によりエネルギ-を獲得しているときに特異的に磁気微粒子を生合成することが示唆された。したがって、磁石を有する細菌を大量培養するためにはいかにして低酸素雰囲気を保つかが重要であることが明かとなったので、現在アスコルビン酸の添加や気相部分のガス置換などの方法を用いて大量培養を試みている。 2)磁性細菌の呼吸鎖電子伝達系 本細菌から2種類の可溶性チトクロム、チトクロムcとチトクロムcd_1を精製することができたので、それらの構造及び機能について報告する。 チトクロムcー550は分子量は約9000、塩基性のcタイプチトクロムであり、そのN末端アミノ酸配列を40番目まで決定したところ光合成細菌のチトクロムc_2と高い類似性を示した。この結果は本細菌と光合成細菌との系統的類縁性を示唆するものである。さらにこのチトクロムcは本細菌の膜画分によりすばやく酸化されることより、本細菌の呼吸鎖末端酸化酵素の電子供与体として機能していることが明かとなった。 チトクロムcd_1は分子量59000、酵素1分子中にヘムcdとヘムd_1を持つ。 TMPDーNO^-_2還元活性を示し、細胞内では亜硝酸還元酵素として硝酸呼吸鎖電子伝達系の末端酸化酵素として機能していると思われる。
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