磁性細菌から新しいタイプのヘムを補欠分子族とするヘムタンパク質を精製し、その諸性質について調ベた。磁性細菌の膜画分をTritonX-100で処理することによりこのヘムタンパク質を可溶化した。その後、DEAEイオン交換クロマトグラフィ及びゲル濾過等により電気泳動的均一にまで精製した。本ヘムタンパク質は酸化型で437nm、還元型で592、550及び450nmに吸収極大を示した。分光学的性質はチトクロムa1に極めて類似していたが、ヘムaを持たず、これまで報告されていない新しい型の2種類のヘムを持つことがHPLC及びFABによる分析が明かとなった。また、本ヘムタンパク質は2種類のサブユニットからなり、ヘム以外に銅を2原子含んでいた。これまで磁性細菌の呼吸鎖末端酸化酵素は“Cytochrome al"ではないかと考えられていたが、本研究で得られた“Cytochrome al-like hemoprotein"がほとんどチトクロムc酸化酵素活性を示さないことから、“Cytochrome al"は本細菌の呼吸鎖電子伝達系末端酸化酵素ではないことが明かとなった。次にこのヘムタンパク質の機能を明らかにするために、マグネタイトを生合成している菌体と生合成していない菌体の膜画分の(還元型)-(酸化型)差スペクトルを比較検討した。その結果、マグネタイトを生合成している菌体には本研究で得られた“Cytochrome al-like hemoprotein"が多量に含まれていることが明らかとなり、マグネタイト生合成との関連が示唆され、現在その酵素活性を検討している。 平成3年度の研究により明かとなった磁性細菌のチトクロムcのN末端構造を基にして、プローブを合成し、この遺伝子のクローニングを試みた。その結果、チトクロムc遺伝子を含むDNA断片のクローニングに成功し、現在その構造決定を試みている。
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