動物の各種組織の細胞質に存在し、疎水性分子を特異的に結合する一群の低分子タンパクは 内因性の脂肪酸、アシルCoAなどの他、外来の薬物やアゾ色素等の変異原性物質を結合することにより、代謝過程と生体防御の両面において機能しているものと考えられる。本研究においては、ラット各種組織にみられるこの種のタンパクについて構造と機能の相関を検討した。ラットの小腸に従来知られていないタンパクを見出し、その全構造を明らかにした。外来の物質との接触の最前線ともいえる小腸上皮に、この種のタンパクが存在することは、その生体防御の機能を強く示唆している。 一方ラット腎では、心筋にみられるタンパクと全く同一のものが分布することを、タンパク質レベルでは初めて明らかにした。一方、同じ組織でも雄に特異的に、全く別種のリポカリンファミリに属するタンパクが存在していることを見出し、フェロモン結合等の新しい機能が示唆された。 構造と機能相関の解析については、脂肪酸結合部位の同定のため、まずオレイン酸イミダゾリドのDCC縮合による化学合成を行い、親和性標識試薬とした。またBSP(ブロモスルフォフタレイン)等の反応性誘導体の合成をも検討中である。 機能解明の手掛りと考えられる同一タンパクにみられる多数の分子種の分離と構造解析については、肝細胞Zタンパクについて進めた。その結果、主要なる成分の他に、ミクロソ-ムと挙動を一にするもの、硫安70%飽和沈殿に分画されるものなどを見出し、更に検討している。 以上の実験においては高純度の超純水が必要となり、その製造装置を設備、活用した。
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