1.酵母による組織因子の発現と精製 ヒト組織因子を酵母で発現させるため、ヒト組織因子およびその細胞外ドメインのcDNAを、酵母酸性フォスファタ-ゼプロモ-タ-の下流に挿入し酵母の発現ベクタ-を構築した。酵母AH22株を形質転換したところ、組み換え組織因子は0.1%トリトンIX可溶化画分に発現していた。本因子は活性を有していたものの、予想した分子量よりかなり大きい分子量を示した。一方、組織因子細胞外ドメイン(sTF)は培地中に分泌され、CMセルロ-スカラムと抗ヒト組織因子モノクロ-ナル抗体カラムを用いて、分子量の異なる2種のタンパク質が精製された。sTFαは分子量150Kを示し、マンノ-スを200残基以上含んでいた。一方、sTFβは分子量37Kであった。1l培養から、それぞれ10mgおよび1mg精製された。両因子は天然体と同様に、VIIa因子のペプチド蛍光基質水解能を増強した。したがって、発現した細胞外ドメインは、ヒト胎盤由来の組織因子の細胞外ドメインと等しい活性を有していると考えた。 2.ウシ組織因子のcDNAクロ-ニング ウシ副腎cDNAライブラリ-からウシ組織因子のcDNAを単離しその全塩基配列を決定した。その結果、成熟ウシ組織因子は257アミノ酸残基から成り、そのN末端に35残基のシグナル配列を有することが判明した。細胞外ドメインは3つの糖付加部位を含み、2つのジスルフィド結合が存在した。ウシ組織因子は、ヒト、マウス、ウサギのものと、70%、57%、74%アミノ酸が同一であった。
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