1.酵母による組織因子の発現と精製ヒト組織因子細胞外ドメイン(可溶性組織因子、STF、とよぶ)を酵母で発現させた。発現タンパク質は分子量の異なる2種のタンパク質として精製された。STFαは分子量150Kを示し、マンノースを200残基以上含んでいた。STFβは分子量37Kであった。1l培養から、それぞれ10mgおよび1mg精製された。 2.STFβ-VIIa複合体の酵素学的性質酵母で発現させたSTFβを用いて、VIIa因子の酵素学的性質に検討を加えた。組織因子-VIIa因子複合体の酵素活性を測定するため、25種の蛍光性ペプチド基質をスクリーニングしたところ、Boc-Leu-Thr-Arg-MCAが最も良い基質であることが判明した。この他にも、Boc-Val-Val-Arg-MCA、Boc-Asp(OB_2l)-Pro-Arg-MCA、Boc-Glu(OB_<>)-Ala-Arg-MCAも良い基質であった。VIIα因子単独の場合と組織因子と複合体を形成した時のパラメーターを比べると、Km値には変化を認められなかったものの、Kcat値が約150倍上昇した。したがって、組織因子はVIIa因子の触媒効率を上昇させる。また、組織因子-VIIa因子複合体の酵素活性はヘパリン存在下で血漿中のアンチトロシビンIIIで阻害された。 3.ウシ組織因子のcDNAクローニングウシ副腎cDNAライブラリーからウシ組織因子のcDNAを単離しその全塩基配列を決定した。その結果、成熟ウシ組織因子は257アミノ酸残基から成り、ヒト、マウス、ウサギのものと、70%、57%、74%のアミノ酸が同一であることが判明した。 4.可溶性変異ヒト組織因子の発現3ヶ所の糖鎖結合部位のAsn残基をAlaに変異した可溶性組織因子を発現させ、発現収率の向上を図るとともに糖鎖の機能の解析を試みた。
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