カルモジュリンやトロポニンcを代表とするカルシウム結合タンパク質は、EFハンドと呼ばれるカルシウム結合ドメインを持ち'細胞内の情報伝達や細胞機能の調節において中心的役割を演じている。本研究は、代表者らにより発見された6個のEFハンド様構造を持つタンパク質のcDNAをクローニングし、その構造上の全体像を明らかにすると同時に、その分子の持つ特性を明らかにすることを目的として行われた。本年度は、まず、前年度に蛍光顕微鏡を用いて行った実験より得られた結果を、共通点レーザー顕微鏡を用いて確認すると同時に、細胞分画等生化学方法を使ってさらに解析し、本タンパク質が小胞体内腔のタンパク質であることを証明した。次に、前年度に得られたcDNAを発現ベクターに組み込み、本タンパク質をCOS細胞で発現させることに成功した。そして本タンパク質のカルボキシル末端にあるHDEL配列が、小胞体内腔への残留シグナルであることを証明した。以上の結果と前年度に得られた結果は、本タンパク質が、6個のEFハンド様構造を持ち、小胞体内腔に存在するカルシウム結合タンパク質であることを明らかにした。そこで、我々は、このタンパク質をレティキュロカルビン(reticulocalbin)と命名した。レティキュロカルビンの遺伝子構造に関しては、cDNAをプローブとしてスクリーニングを行い、遺伝子クローンのクローニングが終了した。予備的な解析の結果は、レティキュロカルビンのエクソン-イントロン構造は、カルモジュリアンやトロポニンcのそれとはかなり異なっていることを示しており、これらEFハンドタンパク質ファミリーの進化を考える上で興味深い結果が得られている。
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