研究概要 |
本研究の目的は、最近のタンパクの分離、分析の技術を用いることにより、從来研究できなかった微量の蛇毒及び蛇毒成分を研究することにある。今年度はHPLC装置を用い、まずエラブウミヘビ(Laticauda semifasciata)毒中の神経毒、カルジオトキシン、ホスホリパ-ゼ等をイオン交換クロマトグラフィ-により分離することを試みた。エラブトキシンa,b,c,ホスホリパ-ゼA_2I,II,III,IVを単離する条件を確立した。これまで低圧クロマトグラフィ-で使用してきた条件はHPLCの場合適さず、pH,流速,グラジエット等すべて再検討を要した。またウミヘビAipysurus laevis毒の成分分離を試みた。このウミヘビ毒からはわれわれが3種の神経毒成分Ala,b,cを単離していたが、最近遺伝子の構造からAldと呼ぶべき第4の成分の可能性が指摘されたので微量成分単離の技術により、このタンパクが事実存在するか否か、興味深いものである。 また最近イオン交換とは全く異る原理、すなわちタンパクをその分子表面の疎水性により単離する方法が開発された。この方法(疎水相互作用クロマトグラフィ-、HIC)は從来の逆相クロマトグラフィ-(RPC)と異り、穏やかな条件でタンパクを変性させずに分けることができる。イオン交換と併用すればよい分離が得られるはずなのでエラブウミヘビ毒につき基礎条件を検討した。 与えられた研究費は申請の通りクロマトグラフィ-した成分を濃縮するための限外濾過膜及び乾燥箱の購入、蛇毒収集のための旅費に使用した。
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