1.ヌクレオチドピロホスファタ-ゼ遺伝子の転写量の測定 ーーーーrun on分析法による転写量の測定に先立ち、ノ-ザンブロット法により、Lowe症候群患者ならびに正常ヒト繊維芽細胞中に存在する本酵素のmRNA量の測定を行った。その結果、Lowe症候群細胞中では、本酵素の活性上昇にほぼ比例してmRNAの量が上昇していることが明らかとなった。run on分析については現在実施中である。 2.ヌクレオチドピホスファタ-ゼ遺伝子のクロ-ニング ーーーーヒトのゲノムDNAをSau 3Aで断片化し、EMBLに組込んで本遺伝子のクロ-ニングを行なった。これまでにcDNAの約80%をカバ-するゲノムDNAのクロ-ンをとることに成功しているが、cDNAの5'末端付近、5'非翻訳領域、およびその5'隣接領域をカバ-するクロ-ンは、何回かスクリ-ニングを繰返したにもかかわらず拾うことができなかった。現在、ゲノムDNAを切断する制限酵素とそれを組込むベクタ-をほかのものにかえてスクリ-ニングを行なっている。 3.ヌクレオチドピホスファタ-ゼ遺伝子の染色体上での位置の決定 ーーーーヌクレオチドピロホスファタ-ゼのcDNAの断片を用いて、in situハイブリダイゼ-ジョン法により、本酵子素の遺伝子が乗っている染色体の種類とその位置を調べた結果、第6染色体のq22ーq23の位置であることが明らかとなった。Lowe症候群はX染色体に連関した疾病であるため、この疾患と強い相関を示す本酵素の遺伝子はX染体上にあるものと予想していたが、得られた結果はこれとは異なるものであった。こうしたことから、Lowe症候群における本酵素の異常昂進の機構については、X染色体上にあるLowe遺伝子の産物が間接的に本酵素に発現を制御するといった新しい考えを導入する必要があるものと考えられる。
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