1.SPT遺伝子上流域に存在すると考えられるホルモン応答領域の解析 (1)培養細胞へのトランスフェクション(Tf)実験の条件…レポーター遺伝子としてはCAT遺伝子以外にホタルのルシフェラーゼを用いる。Tfの効率を補正するためβーガラクトシダーゼ遺伝子を含むpCH110を使用する。Tfはリン酸カルシウム法で行い、DNAーリン酸カルシウム沈澱との接触は18h、細胞は48h後に回収し、細胞抽出物を得る。組み換え遺伝子を導入する細胞はヒト肝由来のHepG2である。 (2)Tf用組み換え体の作製…SPT遺伝子上流-5.5kbのBamHIまでのDNA断片をレポーター遺伝子とつなげたものを最長のクローンとして作製した。現在、5側からの段階的欠失組み換え体、および内部の欠失組み換え体を用意しているところである。-1256bpのHindIIIまでは既に塩基配列を決定しており、この中に実際に機能していると思われるシスエレメントが多数存在しているので、この領域については、より細かな欠失組み換え体を作製中である。組み換え体が揃い次第、Tf実験に入る予定である。 2.転写開始部位選択機構の解析 ラットSPT遺伝子には転写開始部位が二箇所存在し、下流からの転写位置付近には通常見られるTATA Boxが見あたらないので、特に下流のプロモーターについてその解析を行った。SPT遺伝子上流域493塩基(-493)から、+106塩基までをCAT遺伝子につないだ組み換え体を非誘導時の正対照として用いた。5^1側から段階的に短くしていくと、+21から+37へとけずるとCAT活性が約20%に低下し、更に+37から+64で4%にまで低下した。このことは通常の転写においては下流からの転写がほとんどであり、その転写に関わるエレメントが、+21と+37、+37と+64の間にそれぞれ存在することを示唆している。現在、このあたりのDNA断片を用いてゲルシフト解析を始めようとしているところである。
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