リジン脱水素酵素は、基質リジンによって二量体から四量体に会合して、活性化されるユニークなアロステリック酵素であり、触媒部位のほかにエフェクター結合部位が存在している。このユニークな脱水素酵素の触媒機能を構造との相互関係の上にたって解明することを目的として、今年度は、SH基の修飾に焦点をあて調査した。本酵素のSH基をDTNBで修飾すると、二量体酵素と四量体酵素間の移行が阻害され、二量体は活性を示さないが、四量体は活性を示し、エフェクター部位近傍にSH基の存在が示唆された。そこで、二量体と四量体酵素を蛍光試薬4-クロロ-7-ニトロべンゾフラザン(NBD chloride)で修飾し、TPCK-処理トリプシンで消化後、C_4-カラムを用いて、HPLCでぺプチドを分離した。一方、ショットガン法でクローニングを行い、約3.0kbのHind3-Xho1挿入断片を有するpKUKD19‐3を得ているが、本酵素の構造遺伝子の塩基配列を決定するために、さらにサブクローン化して、本酵素遺伝子を含む約1.3kbのSap1‐Xho1断片を含むpKUKD19‐4を構築した。また、Ssp1‐Xho1断片を高発現ベクターpKK223‐3のtacプロモーターの下流に挿入することによってpKUKD19-5を調製し、本酵素遺伝子の高発現株を得た。このSsp1‐Xho1断片の塩基配列を解析した結果、1074塩基からなるオープンリディグフレームを見い出し、本酵素の一次構造をDNAレベルから明らかにした。NAD結合領域はN‐末端側に、触媒領域はC‐末端側にあること、さらに、本酵素には、他の脱水素酵素で重要な働きをしているG‐G‐G‐K配列のリジン残基は認められず、ピリドキサル燐酸で修飾されたリジン残基はエフェクター結合領域に存在していることが推察された。システイン残基は5個存在しているが、121番目あるいは178番目のシステイン残基が解離会合に関係しているものと考えられた。
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