研究概要 |
リジン脱水素酵素は、基質リジンによって二量体から四量体に会合して、活性化されるユニークなアロステリック酵素であり、触媒部位のほかにエフェクター結合部位が存在している。この触媒部位、エフェクター結合部位のアミノ酸残基を明らかにするために、種々の試薬による化学修飾を行った。その結果、触媒部位にアルギニン残基、トリプトファン残基の存在が、エフェクター結合部位にリジン残基、システイン残基の存在が示唆された。またAgrobacterium tumefaciensはTiプラスミドを含んでいるが、本酵素の構造遺伝子はTiプラスミド上にはコードされていなかった。そこで、本菌株の全DNAをHindIIIで部分消化し、ベクターとしてpUC18を用いてE.coli JM109にショットガン法でクローニングを行い、4,000株の組み換え体の中から1株の本酵素活性を有するクローン株を得た。この組み換え体より得られたプラスミドpKUKD19はpUC18のHindIIIサイトに約3.5kbのHindIII断片を含んでおり、これをさらにサブクローン化して、本酵素遺伝子を含む約1.3kbのSspI-XhoI断片を含むpKUKD19-4を構築した。また、SspI-XhoI断片を高発現ベクターpKK223-3のtacプロモーターの下流に挿入することによってpKUKD19-5を調製し、本酵素遺伝子の高発現株を得た。このSspI-XhoI断片の塩基配列を解析した結果、1074塩基からなるオープンリディグフレームを見い出し、本酵素の一次構造を推定した。357残基からなるアミノ酸配列は、ペプチドのN-末端22残基、C-末端2残基のアミノ酸配列と一致した。NAD結合領域はN-末端側に、触媒領域はC-末端側にあること、さらに、本酵素には、他の脱水素酵素で重要な働きをしている触媒部位のG-G-G-K配列のリジン残基は認められず、ピリドキサル燐酸で修飾されたリジン残基はエフェクター結合領域に存在していることが推察された。
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