研究概要 |
ブタ細胞質局在アスパラギン酸アミノ基転移酵素(cAspAT)は、強固な二量体構造をとり、各サブユニットは、Large及びSmallの2つのDomainから構成されている。Large domainに存在するIntersubunit surface間での相互作用、N末端側Small domainの4〜11残基と隣接サブユニットのLarge domainとの相互作用による二量体構造が保持されていることが、X線結晶解析により明かにされている。単量体への解離定数は10^<-9>以下と推定されている。また、それぞれの活性中心が他方のサブユニットのアミノ酸残基の関与により構成されていることより、本酵素の活性発現には二量体構造が必須と考えられている。本研究では、Large domain間におけるイオン結合を構成するアミノ酸残基や、N末端部での相互作用に関与するアミノ酸残基群に、遺伝子操作法を適用し、特定部位にアミク酸置換と欠失をもつ変異酵素を系統的に作成し、その標品の諸性質の検討と二量体酵素との比較により酵素の全体構造と機能の関連を知ると共に、本酵素の機能発現の分子機構を解明しようとしている。本酵素の活性発現に必須とされる二量体構造を保持するため、他方のサブユニットとの相互作用の一部を分担していると考えられるN末端領域を、5,6,7,8,9,10残基と削除し、その酵素の熱安定性、プロテア-ゼに対する感受性や触媒活性の変化を観察した。サブユニット間相互作用に重要と想定されるイオン結合を構成する残基群の一つ、His68を種々のアミノ酸に変異した酵素を作成し、構造安定性、活性変化を観察した。NMRによるダフ酵素のHis領域の観察結果とlleに変異させた酵素のスペクトルの比較により、野生型酵素で最も低磁場に観察され、pHとともに化学シフトの変化を示さない一つのHisピ-クが、変異酵素では消失していることを見いだした。
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