研究概要 |
筆者は先にCF_0CF_1のエネルギ-化に伴いピリドキサ-ルリン酸との反応性が変化するリシン残基がCF_1上に存在すること、それはεサブユニットのLysー109であることを明らかにした。このことはCF_0CF_1のエネルギ-化に伴いεサブユニットのLysー109の廻りで大きく高次構造が変化していることを示している。チラコイド膜への光照射を停止するとCF_0CF_1の脱エネルギ-化が起こるがこのときεーLysー109の反応性が二相性を示しながら元のレベルにまで低下することが本年度の研究により明かとなった。速い低下は1秒以内で完結しそれに続いて半減期が10数秒程度の比較的ゆっくりした低下が起こる。後者の低下速度は脱共役割の添加により著しく促進される。この結果はCF_0CF_1がエネルギ-状態に応じて三つの異なった高次構造E_H、E_M、E_Lをとっていることを示している。消光後の暗所ではCF_0CF_1の不活性化が起こっているがこの不活性化に対するADPおよび脱共役剤の影響を調べることによりE_H,E_M,E_L状態に対応してCF_0CF_1のADPに対する親和性が変化していることが明かとなった。高いエネルギ-状態にあるCF_0CF_1(E_H)はADPに対し低い親和性しか示さない。中程度のエネルギ-状態にあるCF_0CF_1(E_M)はADPに対し高い親和性を示す。基低状態にあるCF_0CF_1(E_L)ではADPが結合部位に近付きにくい構造となっている。E_MおよびE_LはATP加水分解的に高い活性を示すが、ADPと結合した状態E_MーADPはATP加水分解的には低い活性しか示さず、またCatalytic loopertivityを示さない。しかしE_MーADPあるいは複数の部分にADPと結合したE_MーADP_nはATP合成的に非常に高い活性を示す。E_LーADPはATP加水分解的にもATP合成的にも不活性である。
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