研究概要 |
葉緑体チラコイド膜を光照射すると膜内外の△μH^^〜^+の形成にともなってCF_0CF_1は活性化されATP合成およびATP加水分解活性を示すようになる。ここでは光照射にともなうCF_0CF_1の高次構造の変化を解析することによりこの活性化のプロセスの全体像を明らかにすることができた。筆者は先にCF_0CF_1のエネルギー化にともないCF_1のεサブユニットのリシン109の反応性が大きく変化することを見出したが、ここでは高次構造変化の目安としてこのε-Lys-109の反応性の変化を利用した。チラコイド膜を光照射すると膜電位△4の形成にともないCF_0CF_1は直ちにε-Lys-109が低い反応性しか示さないE_L状態からε-Lys-109が中間の反応性を示すE_M状態を経てε-Lys-109が高い反応性を示すE_H状態へと変化する。△PH(あるいはチラコイド膜内部の酸性化)にともないCF_0CF_1の高次構造はE_HからE_Hへ変わる。光を消すと△4の消失にともないE_HはただちにE_Mに変化しさらに△PHの低下とともにE_Lへ戻る。E_M(E_M-ADP),E_H(E_H-ADP)はATP合成的に活性であり、基質ADPに対し高い親和性を示す。E_HはATP合成的に低い活性しか示さず、ADPに対する親和性も低い。E_H,E_M,E_LはADPを触媒部位に結合していないとき、ATP加水分解的に活性である。E_LはADPが近づきにくい構造をとっている。ATP合成に対しては△4と△PHは等価に働きいづれか一方が存在すればよいが、ATP加水分解反応のためには△4と△PHとは等価でなく両方が必要であることがごく最近報告されているが、この事実は筆者が明らかにしたATP合成的に活性なE_M形成のためには△4,△PHいづれでもよいが、ATP加水分解活性を得るために必ず通過しなければならないE_H状態を形成するためには△4と△PHの両者を必要とするという事実とよく一致する。ATP合成的に活性な状態とATP加水分解的に活性な状態とは同一であるとするモデルでは上記の結果を説明することはできない。
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