研究概要 |
旧黄色酵素(OYE)は、フラボドキシンと同様にFMNを補酵素とするフラビン酵素である。この両フラビン酵素の活性域近傍には、ともに酸性アミノ酸残基が多く存在することや、補酵素であるFMNのキシレン部分がタンパク質表面に露出していることなど類似した部分が存在することを明らかにしてきた。これらの結果をもとに、OYEとシトクロムCの相互作用を、フラボドキシンとシトクロムCの複合体と対比して、8位のメチル基をフッ素で置換した8FーFMNやCー13で標識したFMNで再構成したOYEを用いて調べた。 8FーFMNで再構成したOYEの8位のフッ素のNMR信号は、シトクロムCとの結合に伴い、2.0ppm高磁場側に移動した。また、4,4a,10a位のCー13NMR信号は、複合体形成によりそれぞれ0.1,0.3,0.5ppm低磁場側に移動し、2位のCー13NMR信号は、0.2ppm高磁場側に移動した。これらの変化に対するシトクロムCの滴定曲線から、複合体の解離定数は0.3mMと求められた。複合体形成に伴うNMR信号の移動は、複合体でのOYEのフラビン環のウラシル部分の電子密度の低下と、キシレン部分の電子密度の上昇によるものと解釈される。 以上の結果とフラボドキシンからシトクロムCへの電子伝達がフラビン環のキシレン部分のメチル基を介して行なわれることを示唆する結果から、次のような電子伝達促進の仮説が考えられる。すなわち、OYEに電子受容体であるシトクロムCが結合することにより、フラビン環の電子密度分布がウラシル部分からキシレン部分に移動し、この複合体形成がキシレン部分から電子受容体への電子伝達を容易にしている。
|