当研究により得られた成果の概要を以下にまとめる。 1.アドレノドキシン還元酵素 C-13標識したFADを用いて、本酵素のC-13NMRスペクトルを測定した。得られたスペクトルから、NADPの結合に伴いFADの4a位の炭素の電子密度が特に低下することが示唆された。この結果は、本酵素にNADPHが結合することにより、フラビンの4a位の電子密度を低下させ、NADPHからFADへの電子移動の促進をはかることを示唆するものと思われる。 2.旧黄色酵素 この酵素の活性部位を検索するため、8-フルオロ-FMN(8FFMN)で再構成し、=-キモトリプシンで限定加水分解した。その結果14Kと34Kとに限定加水分解され、14KドメインのN末端ロイシンと8FFMNが反応し、共有結合型フラビンタンパク質となった。この結果は、旧黄色酵素の14Kドメインにフラビン結合部位が存在し、FMNのキシレン部分が14KドメインのN末端近くに存在することを示している。 3.中鎖アシルC_0A脱火素酵素 C-13やN-15標識したFADを用いて、本酵素のC-13、N-15NMR測定を行なった。アセトアセチルC_0Aとの複合体形成により、フラビンの5位の窒素の電子密度に顕著な変化が観測された。また、共鳴ラマンスペクトルから、このアセトアセチルC_0Aとの複合体やオクタノイルC_0Aとの反応で生じる紫色複合体において、結合しているリガンドは、エノレート型で1位の水酸基が解離した陰イオンとなっていることが明らかとなった。これらの結果から、アシルC_0Aの2位のプロトン引き抜きが容易になっていることがよく説明された。
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