研究概要 |
本研究は、培養ヒト細胞において対紫外線応答の初期の過程で活性化するプロテア-ゼの分離・抽出・精製を目指している。この活性化は,DNA修復レベルの増大と形貭突然変異頻度の低下と連動しており,エラ-フリ-(誤りなし)DNA修復の誘導に関与する可能性がある。当面の目標は,目的のプロテア-ゼが採取しやすく,その役割が分子レベルで検出しやすい実験系の確立を主眼としている。 本研究の遂行上障壁となる点に,活性が安定な粗酵素標品を大量にどのようにして得るかという難問がある。平成3年度はこの点の解決におよその目安をつけた。 これまで,プロテア-ゼ活性を検出し得た細胞は,本酵素活性誘発促進剤であるインタ-フェロンで処理した細胞か、元来紫外線致死耐性株としてとられた細胞であった。しかも、活性レベルは低く,数時間で失活する標品しか得られなかった。今回,直接,プロテア-ゼを産生し得る変異株作りに成功した。目的の酵素がプロテア-ゼ活性阻害剤であるアンチパインに高感受性があること,および,活性誘発が検出される時間は紫外線照射直後数分であることに着目し,紫外線照射細胞をアンチパイン添加メジウム中で数時間培養するという,本来致死条件と考えられる培養法にもかかわらず,生存し得た細胞から樹立した。分離・抽出の第一段階でこの変異株より得られた粗酵素標品は,比活性が従来得られた標品より10倍以上高く,今後の精製に有用であることが示唆された。 得られた変異株では,親株より形貭突然変異頻度が低く,プロテア-ゼ活性の誘発との変異抑制の連動は再現された。従って,この株の解析を通して、プロテア-ゼの役割はより一層明確になることが期待される。
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