研究概要 |
我々の見出した哺乳動物細胞での新しい熱ショック蛋白質hsp40の部分的アミノ酸配列および抗体作製のために、二次元電気泳動法によるHela細胞のhsp40の大量精製を試みた。この方法は一次元目(NEPHGE)をディスクゲルのかわりにスラブゲルで泳動し、その後二次元目のSDS/PAGEを行なうもので、SlabーNEPHGE/SDSーPAGE法と名付けた。この方法では一回の泳動で10〜15μgのhsp40が精製できた。このhsp40のN末のアミノ酸配列を決定したところ、バクテリアの熱ショックタンパク質の一つであるDnaJと相同性があった(48残基のうち24残基が同一のアミノ酸、50% identity,69% similerity)。hsp40はまた酵母のDnaJホモロ-グであるSCJ1、SEC63、YDJ1、SIS1などとも相同性があった.このことからhsp40はDnaJのマンマリアンホモロ-グであると考えられる。 また精製したhsp40を用いて抗hsp40抗体を作製し、蛍光抗体法によりhsp40の細胞内局在を検討した。興味あることに、hsp40はhsp70とほぼ同様の局在を示した。つまり熱ショックによりhsp40は核・核小体に移行し、細胞を37℃におくと再び細胞質に戻ってきた。hsp40とhsp70の細胞内移行の動態はほとんど同じであった。また熱ショック後の細胞を二重蛍光染色(抗hsp40抗体と抗hsp70抗体)してみると両者の局在は一致していた。これらのことからhsp40とhsp70は挙動を共にしていることが示唆された.しかし免疫沈降の実験ではhsp40とhsp70が会合しているという結果は得られなかった。 バクテリアではDnaK(hsp70ホモロ-グ)とDnaJ(hsp40ホモロ-グ)が共同してタンパク質のfoldingやassembly・disassemblyに関与していることが示唆されている。このことから類推して、哺乳動物細胞ではhsp40とhsp70が共同で熱ショックで変性した核・核小体内のタンパク質の修復(refolding)などに関与していることが示唆された。
|