研究概要 |
1.金属燃料と被覆管との両立性に関する研究 本補助金で購入したターボ分子ポンプによって質量分析計のイオン化室の高真空度化が達成でき,S/N比が1桁上昇した。改良した質量分析計を用いてFe_2ZrとCr_2Zr合金の蒸気圧測定を1476-1756Kで行った。実測したFe(g)とCr(g)分圧から両合金の生成自由エネルギーを決定し,金属燃料(U-Pu-Zr合金)とステンレス被覆管との間の予想反応生成物のエネルギーとの大小関係を調べることによって化学反応の有無を推定した。その結果,原子炉通常運転時の温度下でも反応が生じることが解った。 2.金属燃料の耐酸化性の研究 U-Pu-Zr金属燃料の製造時や事故時の健全性評価の基礎データを得る為,U-10at%ZrとU-20at%Zr合金の空気中,アルゴン中で423-1063Kでの酸化挙動を高温熱天秤を用いて調べた。低温域(T<500K)では表面反応と拡散律速が共存しており,後者ではUO_2酸化被膜中の酸素の拡散が支配的であった。高温域では,試料の割れと酸化膜の形成が同時に生じており,みかけ上は表面反応律速であった。従来の純ウラン金属と比較すると,U-Zr合金の酸化速度定数は全温域でやや小さかった。U-Zr合金は500K以上温度域での酸化によって割れたり,微粉末化することが明らかになった。 3.核分裂生成物と金属燃料または被覆管との反応に関する研究 (1)Te-Cr系化合物の高温熱容量測定:室温-900Kの範囲で熱容量を測定し,規則-不規則転移,相境界,融点等の相平衝を明らかにした。 (2)Pd-Zr系化合物の高温蒸気圧測定とその熱力学データの総合評価:高温質量分析計でPd(g)蒸気圧を実測し各種化合物の生成自由エネルギーを決定した。また従来の数少ないデータと既存の相平衝図等から現時点で最も信頼性の高いZr-Pd系の高温熱力学データを決定した。
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