サブクール液中の膜沸騰熱伝達にとって、蒸気膜および液体温度境界層内における流体の速度分布と温度分布が重要なパラメータである。本研究は、大気圧下の冷媒R-113中における直径10mmの白金球周りのプール膜沸騰を対象に、蒸気膜厚、液体温度境界層厚さならびに境界層内温度分布を光学的手法を用いて測定し、既存の理論モデルを検証することが目的である。研究の過程で気液界面の振動が見いだされたので、その解析が研究のかなりの部分を占めるようになった。 試験球を槽外で所定の温度に加熱した後液内に浸没させて膜沸騰を起こさせ、核沸騰に遷移するまでの間レーザビーム法により蒸気膜厚さおよび気液界面振動の周波数と振幅を測定し、ホログラフィ干渉法により境界層の厚さと境界層内温度分布を測定した。さらに、自然対流サブクール膜沸騰における界面振動について理論解析を行い実験結果と比較した。その結果以下の知見を得た。 ・気液界面の振動周波数は球過熱度がある値より高い時にはほゞ一定であるが、それより低くなると球過熱度の低下とともに上昇する。液サブクール度が高くなると周波数は上昇する。 ・気液界面の振動の振幅は過熱度の低下とともに減少し、液サブクール度の上昇とともに減少する。 ・液体境界層厚さはサブクール度の上昇とともに増加するが、球過熱度にはほとんど依存しない。 ・線形解析によって求めた固有周波数と実験による測定周波数を比較すると、サブクール度および球過熱度が周波数に及ぼす影響に関しては定性的に一致していた。
|