研究概要 |
ホウ素( ^<10>B)を用いる中性子捕捉療法(NCT)は脳腫瘍とメラノ-マ(皮膚ガン)を対象として原子炉治療として適用されている。近年、 ^<10>Bに代わる物質としてガドリニウム(Gd)が、以下に述べる理由から注目されている。Gdは、GdDTPAの形で核磁気共鳴撮影(MRI)の像影剤と脳腫瘍に用いられている。又、熱中性子捕獲断面積が ^<10>Bの66倍も大きく中性子と核反応をおこして数多くのγ線や内部転換電子を放出する。それ故、本研究は、Gdを用いるNCTの可能性について線量分布の観点から検討を加えるものである。今年度は計算によって算出した線量分布について検討を加えた。計算は最初に、腫瘍を模疑した頭部ファントム内の中性子とγ線束を2次元中性子輸送コ-ド(DOT3.5)により計算した。次に、線束に線量変換係数を乗じて中性子、γ線および内部電子の線量を算出した。この時、入射中性子は熱中性子と熱外中性子を考慮し、さらに、熱中性子の生体内の透過率を改善するために脳内の軽水を重水に置換して線量分布を求めて評価した。以下は得られた成果である。 1)腫瘍部のGd濃度を増加させることで腫瘍部の線量は増加できるが濃度を高めると熱中性子束がより吸収されてしまい1対1では比例しない。 2)表層部に存在する腫瘍にGdが、5,000ppm含有する時、得られる捕獲γ線量率は熱中性子束1.5×10^9cm^<-2>s^<-1>の入射時で10Gyh^<-1>である。 3)内部転換電子による線量率は、捕獲γ線量率より2.5倍大きい。 4)熱外中性子と重水の使用により深部にある腫瘍の治療が期待できる。 5)BNCTの治療時にGdを取り込ませることで腫瘍部の線量を増加でき治療効果を増すことができる。 6)MRIによる診断とGdーNCTによる治療が結合した一連の治療システムとなる可能性がある。
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