研究概要 |
ガドリニウム(Gd)を用いる中性子捕捉療法の可能性を調べるために腫療の大きさ、位置を模疑できるファントムを用いて実験を行ない線量分布を求めた。この時、線量分布に影響を及ぼすと思われる因子として1)腫瘍内に取り込まれるGd濃度、2)入射中性子ビーム径および3)腫瘍の位置を考慮した。これらをパラミータとしてファントム内の熱中性子束、γ線量率および内部転換電子による線量率分布について、金箔の放射化法、TLDおよびフィルム法で各々求めた。実験は、JRR3Mの中性子ラジオグラフィ用熱中性子場を用いて行なった。実験の結果、以下のことが分かった。1)腫瘍部にGdが取り込まれる程、線量増強は大きくなるが、その増強割合はGd濃度に比例しない。これは、腫瘍部のGd濃度が高い程、熱中性子束の低下が起こるためである。2)この線量増強は、中性子ビーム径が大きい程、又、腫瘍位置がファントムの表層部に存在する程大きくなる。即ち、熱中性子束が大きい程、大きい。3)即ち、この線量増強は、主に、Gdの熱中性子捕獲γ線によるものであり、内部転換電子による線量は、γ線量に比べて20分の1と小さい。4)捕獲γ線による線量分布は、細胞レベルではないので、ホウ素を用いる中性子捕捉療法の線量分布に比べると良くない。5)しかしながら、表層部の腫瘍に、Gd5,000ppm含有していると、4×10^911/cm^2Sの熱中性子束の入射により、25Gy/hの線量率を得ることができる。以上より、中性子捕捉療法への可能性として、腫瘍が表層部に存在するガン(例えばメラノーマ)に適用できると思われる。
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