研究概要 |
1.X線スペクトルから実効エネルギーへの計算精度;散乱X線の実効エネルギーは、一次X線のように減弱曲線の測定から直接に求めることはできないため、散乱X線スペクトルを測定して、これから計算によって実効エネルギーを求めるという方法を用いる。そのためには計算の結果が、実測値とどの程度の精度で一致するかを検討しておく必要がある。前年度の実験では精度が悪く、かなり苦労したが、ジオメトリーの改良により管電圧100〜150kV領域ではほとんど計算値と実測値は一致し、低管電圧領域でも3%程度の誤差で両者は一致した。 2.散乱X線スペクトルの測定;管電圧50〜150kVの一次X線を20×20×20cm^3の水で作った散乱体に照射して、90度方向の散乱X線スペクトルをGe半導体検出器で測定した。スペクトルの最大エネルギーは、コンプトン散乱式の計算値と非常によく一致し、かなりの精度で測定できることが確認できた。そこで、このスペクトルから計算により実効エネルギーを計算すると、最大エネルギーが散乱により低下しているも拘らず、散乱体中で一次X線、散乱X線ともに吸収効果が大きく、それだけ低エネルギー成分が減少し、結果的に実効エネルギーは一次X線エネルギーより、いずれの管電圧においても大きな値となった。散乱X線を制御する因子は数多く考えられるが、今回は管電圧(50〜150kV)、散乱角(30〜150゚)、散乱体積(1^3cm^3,5^3cm^3,20^3cm^3)の因子について測定し、それぞれについて実効エネルギー、QIを計算し一覧表にした。 3.実効エネルギー変換係数(ECF);散乱X線のQIは最大エネルギーが一次X線最大値より低いため、一次X線と同様、管電圧値から実効エネルギーは求められない。そこで一次X線発生の管電圧と実効エネルギーの比をECFと定め計算した。これにより散乱X線においても、極めて簡単に実効エネルギーが求められるようになった。
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