研究概要 |
平成5年度は、平成3,4年度に行った調査の補充を行った。おもに、相生・因島両地区を中心に造船所の経営のリストラや退職従業者の再就職先の調査等を行った。また、平成3,4年度に蒐集した資料類の整理に多くの時間とアルバイトによる謝金を多く要した。 但し、平成4年度に蒐集した坂出職業安定所の資料「特定不況業種離職者の求職手帳発給台帳」の転写及びコピーでは、再就職先を示す求職表が廃棄されていたため、相生・因島両地区のばあいとは同時限で比較検討ができなくなった。そのため、今回の研究結果報告書では詳細な分析は出来ず、概略を述べることと、典型的な事例の説明で終ってしまった。 石播相生事業所では、平成5年11月現在旧第3工場を中心に主要製品は陸上用ボイラーを製造している。不況業種の新造船部門は、工場内に別会社を設立して生産を続けている。すなわち、旧第2工場では住友重機との合弁でデイーゼルユナイテッド社を設立し、主に舶用デイーゼルエンジンを生産している。また、旧第1工場では平成2年4月にIHIアムテックという石播の小会社を設立して、呉や知多事業所で使用する船体ブロックを建造している。従業者数は合計約2,000名で最盛期の1/4でかろうじて生産を続行している状況である。 そのため、相生市での市税や製造品出荷額に占める石播相生事業所の地位は大巾に減少してその地域経済へ及ぼす影響も弱くなって来ている。 日立造船因島工場でも、相生の事例と同様に別会社を組織して、新造船部門の船体ブロックやデイーゼルエンジンを製造している。親会社としては修繕船部門の225名と、バイオ事業部等を残している。バイオ事業部では杜仲茶を発売して、その売れ行きがよく、平成5年秋には在庫のなくなる状態にまでなったという。船体ブロック製造の子会社も近年好況であり、島外からのUターン再就職者も帰って来ているという。下請関連工場群は日立造船の仕事が少なくなった不況期に他産業への転換を計って現在では安定して来ているといわれている。
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