研究概要 |
まず調査地域については,個人でできる範囲は限定されているので,一つに絞り込むことにし,栃木・群馬両県にまたがる「両毛地域」を取り上げた。当該地域は,申請者が従来2度にわたり調査してきた地域であり,またそこに立地する自動車メ-カ-が経営悪化の中で輸出市場におけるシェア維持のために現地生産を拡大せざるを得ない状況にあり,この間の海外現地生産の本格化により大きな影響が予想されている地域でもある。 現地調査は,8月から9月にかけて集中的に実施した。今年度の作業としては,企業に関する聞取調査および企業・業界資料等の収集を予定していた。後者については予定通り進展したが,前者の聞取調査はなかなか協力が得られず,次年度も行う必要がある。なお,企業・業界資料の分析から,平成元年以降の労働力不足,労働時間短縮の動きが,現地生産化の動きとともに,国内生産体制の再編を早める要因となっていることがわかった。 また,地域経済循環に関しての資料収集・分析を予定していたが,対象地域の県および市町村での関係資料の整備が必ずしも十分ではないため,オ-ソドックスな資料である企業・産業・就業・労働力等に関する地域集計資料の収集・分析に切り替えて実施した。併せて,自治体・商工会議所,関係諸組合等からのヒアリングも行なった。地域資料に関してはまだ集計中であるが,関係団体からの聞取調査によれば,メ-カ-直の一次下請企業群での影響はほぼストレ-トに出ているかが,そりよりも下位の企業群ではかなりの「自動車離れ」や多角化が進んでいる。また当該地域では自動車以外の業種の集積が進んでおり,その動向との錯綜がみられる。その意味で地域経済への影響も階層的で多様になっているようである。次年度はこの辺のところに焦点を絞って調査する予定である。
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