本研究では、秋田県六郷扇状地を例に、扇央の地下水涵養域と扇端の地下水利用域の2地点に深さの異なるピエゾメーター(水理水頭観測井)を置いて、地下水位変動のモニタリングに関する研究を行う。平成4年度には、特に下の1〜3の点に注目して観測資料を収集した。そこから得られた知見は、a〜cのとおりである。1.扇状地の不圧地下水において、深さの異なるピエゾメーター間に水理水頭差が生じるのか、生じるとすればその差はどのくらいか。2.深さの異なるピエゾメーター間に生じる水理水頭差は地下水位の上昇期と下降期とでどのように異なるか。3.上の1、2の点は、扇央と扇端でどのように異なるか。 a.扇状地の不圧地下水を対象とする、深さの異なるピエゾメーター(P)間には、水理水頭差が明瞭に現れる。b.ピエゾメーター間の水理水頭は、年間を通して扇央、扇端とも、深度の浅いピエゾメーターから深度の深いピエゾメーターに移るにしたがって低下する。c.以上の内容を、上の1〜3の点に照らしてまとめると次のとおりである。 このように、深度別の水頭差は、先端よりも扇央で大きく、地下水位の下降期よりも上昇期(地下水涵養期)において大きい。いずれも理屈にかなっているといえる。 なお、扇状地の不圧地下水の帯水層を構成している地層は一様に扇状地礫層であり、地下水位は一定の年変化をくり返す。これらの点については、別の機会に併記する。
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