研究概要 |
研究対象流域として,筑波大学川上演習林内に設置した試験流域(流域面積0.14km^2)を選定し,トリチウム,水素・酸素の安定同位体ならびに無機水質成分をトレーサーとして,流域内循環水の溶存成分濃度の平均化作用について考察した。今年度得られた知見は以下の通りである。 1)土壌水の水素・酸素安定同位体比は,深度1mまでの範囲において年間にわたって大きな変動を示すが,それ以深においては年間変動は少なく,ある一定の値に収束する均質化現象を示す。 2)この均質化現象は土壌水の挙動と密接に関連しており,深度1m以内に生ずる収束ゼロフラックス面と発散ゼロフラックス面の発生・消滅が大きな原因となっている。 3)安定同位体比に見られる流域内での均質化現象は,発散ゼロフラックス面が消滅し,収束ゼロフラックス面が形成される際に,この収束ゼロフラックス面の近傍で古い水と新しい水が混合することによって生ずることが明らかとなった。 4)河川水の無機水質成分の形成を考える上では斜面基部から谷底にかけての範囲が重要であり,この範囲では滞留時間の短かい土壌水と滞留時間の長い地下水の流線が集中する場所を形成し,これによって両成分の混合が行われ,河川水の水質が形成されることが明らかとなった。
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