研究概要 |
天然の鉱物を熱すると発光現象が見られることは古くから知られており,熱ルミネッセンスと呼ばれる。その強度は鉱物によって異なるが,年代と関係が深く,年代に換算できる。本年は,計画の第1年度として,熱ルミネッセンス測定の用具の整備,測定プログラムの整備と,試料採取,TLD線量計の埋設を行った。 用具の整備は年間線量の推定に関して,線量計とそのリセット装置の購入とβ線,γ線の線量を別個に推定するため,放射線隔離ボックスを作成した。線量計として微量の放射線に感じるTLD線量計素子(松下UDー110Sとハ-ショウTLD900)を購入し,そのリセット装置として内田マッフル炉を購入した。隔離ボックスは厚さ10cmの鉛のブロックにより作成した。また,β線の測定のため,厚1mmの真鍮パイプにより,アルファ線の影響の無い環境を作成した。測定には数ヵ月以上必要で,隔離ボックス中にTLD線量計を設置し,土層中の線量を測定中である。 測定プログラムは年間線量計算ル-チンを改良すること,プロッタによる表示ル-チンを完成させた。 熱ルミネッセンス測定試料は石英を含む量が多い三瓶山のテフラと玄武岩中の捕獲岩から採取した。この三瓶火山の石英は高温型であり,マグマ溜りの中で成長したものと見られる。したがって,熱ルミネッセンスの畜積は爆発直後の温度低下以降であり,熱ルミネッセンスの測定試料として優れたものと考えられる。また,玄武岩からなる近畿北部の山地の火山岩にはしばしばゼノリスが含まれている。このゼノリスの起源は玄武岩の基盤である北但層群中の流紋岩であると見られる。ゼノリスは通常玄武岩中にあって発泡している。これは捕獲岩の温度が800℃前後にまで上昇したことを示し,玄武岩と接触した際に確実に熱ルミネッセンスがリセットされたことを示している。これらの試料を採取した。
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