研究にあたって、まず、ガラスチューブに入った熱ルミネッセンス素子の被曝線量蓄積の検討を行った。その結果、厚さ10cmの鉛箱中では線量蓄積の経時的増加はなかったが、真鍮チューブ、銅チューブではその厚さに影響されない線量蓄積が確認された。また、各地に埋没した線量計の線量蓄積は地域毎に違いがあり、年間線量の測定はテフラと同一地点で測定する必要のあることが明らかとなった。 山陰地域でテフラの鉱物組成、火山カラスの屈折率など記載岩石学的性質ならびに各序を検討し、参考資料として、北陸地方に分布するテフラについても同様の検討を行なった。それら各序の明らかになったテフラについて、熱ルミネッセンス強度を測定した。熱ルミネッセンス強度はテフラのそれぞれではほぼ再現性のある被曝線量が測定された。しかしテフラの中には線量蓄積の少ないものもあり、熱ルミネッセンス測定がすべてのテフラに適用可能であるかどうかについての検討ができた。すなわち、K・Pzは鏡下で石英粒子が多量に認められ、大きな線量蓄積がある。他方、K-Pzよりも古い扇の山に分布する大山障下軽石の場合、K-Tzよりも弱い。一方、K-Tzよりもかなり古い北陸の火砕流堆積物では熱ルミネッセンスはかなりつよく測定される。又、大山テフラの一部は明らかに熱ルミ発光が認められる。これからは鉱物組成と障下後の時間の反映であり、熱ルミネッセンスは蓄積されやすい鉱物を含むテフラ、古いテフラでは強いことが判った。これは熱ルミ強度により直接テフラを比較できないが、年代を数字で示す場合、それぞれのテフラの被曝線量に対する発光量を測定する必要があることを示している。
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