研究概要 |
前年度からの野外観測結果の解析やSPACの水分移動の数値実験の実施および研究の総まとめを最終年度である今年度に行なった。得られた成果をまとめると以下の様になる。 1.前年度以前に得られた観測データを基に水・熱収支計算を行なって量的な立場から検討し,その結果発散・収束ゼロフラックス面の形成機構や地下水涵養機構を明らかにした。特に,発散ゼロフラックス面の不飽和帯における役割が大きく,夏季においてはそれの発達は時間単位で発達し,地表面蒸発散に伴う土壌水分移動を大きく反映していることが分った。また,ゼロフラックス面は必ずしも熱移動とは対応せず,本試験地では熱の水分移動に与える影響を十分明らかにできなかった。今後さらに熱・水の連結現象のための観測や室内実験が必要と思われた。 2.SPACの物理モデルを基に不飽和帯中の水分移動の数値実験を行ない,野外観測データとの比較検討を実施した。具体的には,地表面蒸発散量をPenman-Brutsaert法で算定し,それをさらに蒸発と蒸散に葉面積モデルで分け,時間単位で不飽和帯中の水分移動のフラックス計算を実施した。その結果,量的評価に不満は残るものの,ゼロフラックス面のシミュレートは十分納得のゆくものであった。精度の良いフラックス計算のためにも水分特性の再検討が今後の課題と考えられる。
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