研究概要 |
本研究は野外観測により草地土壌面における地表面蒸発散と土壌水分移動の実態を把握し,観測結果の解析と数値解析からそれらの相互作用および機構について明らかにした。以下にその結果をまとめて示す。 1.地表面状態の変化(草の成育と水分量)によって蒸発散量が変化する。 2.土壌熱伝導率が根群域では水分量による変化は見られなかったが,根群域の下部以下の5〜10cm層では水分量に依存する。 3.降雨後の土壌水分が熱フラックスに影響を与えている。 4.地表面蒸発散量に比して地表面付近の土壌水分フラックスのオーダは小さい。この原因は水蒸気移動や植物の吸い上げ効果と考えられる。 5.発散ゼロフラックス面の不飽和帯における役割が大きく,夏季においてはそれの発達は時間単位で進み,地表面蒸発散に伴う土壌水分移動をコントロールしている。 6.地表面付近薄層土壌中の夏の水蒸気フラックスはRichardsの式で求めた水分フラックスより2オーダ以下小さな値を示し,本試験地の様な所では体積水分量が約5%以上であるため土壌水分移動における水蒸気移動の役割はあまりないと云える。 7.地表面蒸発散を考慮した土壌水分移動(温度一定)の物理モデルは日単位でのゼロフラックス面の形成や移動の再現に有効であるが,量的評価のためには水分特性パラメータの決定を含めてまだ検討の余地がある。
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